平成26年10月10日(金)
ロンドンでの滞在ホテルである「HOLIDAY INN KENSINGTON FORUM」を朝の8時に出発し、高速道路などを使って約2時間を掛けて、今回の調査団、最初の公式訪問となるケントカウンティ州議会を訪れました。
予定よりちょっと早めの到着となったが、先ずは2階の小ホール(ゲストルーム?)に案内をされて、ウエルカムドリンク(テーブルに置いてあるコーヒー・紅茶をご自由にお飲み下さいといった様な)を頂き時間調整をすることとなりました。
間もなく2〜3人の方が入ってこられ、誰からともなく「名刺の交換」が始まったので、私もこの日の為にパソコンで(我が射水市を代表する「帆船海王丸と新湊大橋」が描かれている台紙に)作成した英語バージョンの名刺を取り出し、英語での「本邦初公開」のご挨拶です。
『Nice to meet you, My name is Hisakazu Takahashi Imizu city council member. Imizu is a city located in Toyama Prefecture.・・・・・』
日本語で云いますと「初めまして、私は射水市議会議員の高橋久和と申します。射水市は日本のほぼ中央で日本海側に面した富山県に位置する市です。
日本では、来年には北陸新幹線も開通することから、皆さんが日本にお越しの際には、ぜひ富山そして射水市に来て頂きたいと思います。』
という旨のご挨拶をしたのですが、私と名刺交換をした Gary Cooke(ゲーリー クック・法人及び住民サービス閣僚)氏は「新幹線に乗って富士山を見た事がある」との返事だったので、「日本に来られたのは仕事で、それとも観光で?」とお聞きしたら、「以前に保険関係(どうも東京海上保険らしかったが)の仕事をしていて日本へ行った事がある。」とのことであり、「北陸新幹線では約400kmある東京〜富山間を、約2時間8分で行ける事になる。」との説明にも「こちらでも、ロンドンとフォークストン(現地ではこの地名が聞き取れませんでした)を日本製の高速電車が走っている」との事でして、私なりにもCooke氏とある程度(儀礼的なやり取り以外の)言葉が交わせた事で「一息(自身が付いた)つけた出来事」だったと感じております。
今になって(日本に帰って来てから)考えると、最初に話をした人が「日本に来た事がある(日本人と接した事がある)」Cooke氏であったからこそ、私の話の内容も理解をしていただく事ができたのでありまして、実は、この後も積極的に(私の方から)いろんな人に声を掛ける(挨拶程度の)事になるのですが、あらためて「最初に話をした人がCooke氏で良かった」と感謝しております。
さて、ケントカウンティ州議会(イングランドでは、地方自治体の構造として一層制と二層制が混在しており、ケントカウンティは二層制の地域でして、カウンティは日本の都道府県に近い機能を有しております。日本流で云えばケント県といった方が分かりやすいと思いますが、翻訳しますと「州」となります。)では、地方行財政と施策についてという事で伺いましたが、向こうの資料のテーマは「Local Government Organisation & Funding」で、直訳しますと「地方政府機関と資金調達」という事になります。
先ず、イギリスの行政区画を日本流に考える事が難しいことから、「Local Government Structure」【地方政府の構造】ということでイングランドの行政区画の説明から始まりました。
その中で、ケント州に関するデータについて述べますと、陸地面積は約3,600平方キロ。人口150万人でその内の71%の人が都市部にすんでおり、世帯数は630,000とのことです。
Council Functions【行政機能】としては2層構造になっており、County(ケント州)としては子どもや成人そして高齢者の方の社会福祉サービス。学校の運営。道路整備。バス交通。廃棄物処理などを担当。
州の下部組織District(日本でいえば、市町村)がケント州には13あり、住宅問題や建築規制。都市計画。駐車畳の管理や各種の認可事務。廃棄物収集。市税の徴収などを担当。
さらには、Districtの下(下という表現が間違っているかも?)に306のparish(教会の教区に起源をもつ地域自治組織。但しその事務や機能はそれぞれのパリッシュによって違うとの事)が存在しているとの事でした。
Kent County Council【ケント州議会】に関しては、選出議員が84名。職員が30,000人以上で、その内20,000人余りが学校関係者(教員やアシスタントとの事)。それ(学校スタッフ)以外の約半分(説明ではそのほとんどと言われたが)は社会福祉の担当として働いており、職員の平均年収は19,000ポンド(因みに、英国の平均年収は26,500ポンド、週37時間労働の最低賃金は12,000ポンド)だそうです。
How is KCC Funded(£1.85bn)?【ケント州の歳入(約3,330億円)】(と私はみました)に関しては、学校関係に限定された政府からの補助金が£694(1,265億円)38%と一番大きく、地方税£579(1,030億円)31%(内、住民税£533で全体の29%、事業税£46で2%)、政府から学校以外に限定された補助金が£215(400億円)12%などが主なものであり、全体の7割近くが政府からの何らかの補助金でした。
また、歳出に関しては、学校関係が£721(1,300億円)39%で一番大きく、成人や高齢者を対象にした福祉関係に£325(570億円)17%、子どもや若者の福祉関係に£266(500億円)15%などが主なものとなっております。
Government Policy【英国政府の政策】としての
一番は・1、560億ポンド(約28兆円)の財政赤字への対応。
・そのためには、80%の支出削減と20%の増税。
・経済全体のなかでの公共支出削減策として
・公共部門の支出削減
・民間委託への移行
・但し、保健や学校運営、外国援助(人道問題で共同体や国に対する援助らしい?)は保護されている。
等などであり、そうした中でケント州としての行財政運営を考え ねばならない状況であるとか?
実は、英国では昨年統一地方選挙が実施され、今回の視察でお聞きしている行財政計画に含まれるケント州の来年度予算(案)については、今、住民の皆さんに公開され始めて意見を伺いだした(昨日提示したとのこと)ところらしいのです。
そこで、これまでのReactions【反応】という事(私は【英国政府の政策】に関する反応と捉えましたが?)に関して、
・Public(一般市民は)
・「その影響について、まだ、気付いていない」と資料を解釈しましたが、説明では市民は改革案に賛成であるとのことでした。
・総選挙前のローカルサービスより満足している。
・弱者のためのサービスを維持する。
・Govemment【政府は】
・元の削減目標を満たしていない。
・2018年度までの改善の過程にある。
・さらなる削減が必要。
等などという事で一応の説明が終わりましたが、私としては国の財政状況とその対策を説明してもらってから、地方政府機関であるケント州の方針を聞かせていただいた方が解りやすかったのでは?・・・と感じました。
これらの説明を受けて、我が視察団からの質問という事に関しては、やっぱりこの財政計画の実効性への質問から始まりました。
【質疑の一部】
質問:国はこれだけの財政赤字を抱え、本当に2018年度までに解消できるのか?
回答:当然そのつもりで、計画がされている。
質問:80%の支出削減や20%の増税を、市民は受け入れているのか?
回答:これまでのところ、市民の理解を得ていると思う。
質問:来年度予算についてどのようにして、意見徴集をしているのか?
回答:予算案をウェブサイトで公開し意見を聞く事にしている。
また、無作為に抽出した市民の方に『住民サービスの為に1,000ポンドを使うとしたら、何に使えばよいか?』といった質問をしたり、企業の皆さんからも意見を聞く事にしている。
私も質問をしましたが当初予定の少子化対策そのものでなく、学校運営(と私は理解をしたが)について質問をしました。
質問:説明の歳入予算の中で学校に関する国からの限定(使い道を)予算が歳入全体の38%、歳出予算の中でも学校関係が39%(£721)【日本円にして約1300億円】と、大変大きなウエイトを示している。
加えて、職員の中でも20,000人以上が学校関係者との事であったが、説明の中で Transfer of schools to academies【アカデミーへの学校の譲渡】という事で、「我々の責任から離れた」との事であったと記憶しているが、ケント州の財政的には確かに負担が減るのかもしれないが、子どもたちの教育という事は大変重要な問題ではないかと考える。
学校関係で20,000人以上の職員が働いている現実と併せて、新たな問題が生じてくるのではないか?
回答:教育に関しては大変難しく、説明をするのに多くの資料と時間が必要だ。必要なら、資料はメールで送るが?(Gory Cooke氏)
職員に関しては、そのほとんどが学校の先生もしくはアシスタントであり、こうした方たちは外部委託となるであろう。
との事でした。
私ばかりでなく、全体的に質問に対する回答が丁寧というか長くそれも複数の方が応えられるので、時間的に多くの質問が出来なかったように感じられ、また、私たちの常識からして、英国全体の財政赤字の解消策に「80%の支出削減と20%の増税」と当たり前のように説明され、「市民も理解(賛成)している」とのこと自体に「ほんとかな?」との思いが強く、それぞれの立場での想いのかみ合わない状況だったと思いました。
それでも予定の時間をオーバーしお昼も過ぎ、研修を終えて「昼食を食べて!」という事で小ホールに戻ってきましたが、途中の玄関ホールでは職員の皆さんなのだろうか?市民の皆さんなのだろうか?大きな(直径2mくらいの)まるい鉄板の上の「ピザ」らしき物を突っつきながらの賑やかな昼食の最中でした。
サンドイッチと果物、コーヒーと紅茶、団員それぞれ好きなものを頂き、食後には説明を頂いた Mr Cooke,Mr Simmonds、Mr Sisutoneさんたちと会話(通訳の方もおられるので)をしながらの楽しいひと時を過ごさせて頂き、午後からは庁舎内の一部(委員会の傍聴も含めて)を見学させてもらい、2時過ぎには「Kent County Hall」を後にした。
【私の感想】
先ず、イギリスと日本の行政区を考えた場合、歴史的背景の違いなどからあまりにもその構造が違いすぎており、日本のような単純な縦割り(自治会→市町村→県→国)となっていないので、行政の責任範囲がわかりづらかった。
次に、昨年統一地方選挙があったとのことであるが、この選挙で勝った党派が任期中の市政運営を担当することになるらしく、日本の二元代表制における議会の役割とは事が違うらしい。
但し、国の財政赤字を2018年度までに解消すべき(出来るかどうかは、はなはだ疑問であるが)と、強い決意と責任感(たぶんここらあたりが国に負けじと行政運営を担っている方らしく)は感じられた。
Age Profile【年齢構成】の説明の中で、ケントではイギリスの平均より40・50・60代の人口が多く、逆に20・30代の人口が少ない事等から高齢化が進んでいると考えられるとのことであったが、日本ほど(富山ほどといった方が良いかも)低年齢人口の比率が少なくないのではないかと思った。(ケントでは0歳から19歳まで、男女とも3%程度であるが、富山では2%〜2.4%【総人口比】だったと思うので)だから「Transfer of schools to academies」で良いのか?・・・と、あらためて思った次第です。