平成26年10月13日(月)
スウェーデンでの滞在先である「PARK INN UPPSARA」 (パーク イン ウプサラ)ホテルの横にあるアパートの前庭のカエデ類の葉は見事に紅葉し、ナナカマドの実も赤く色づいています。
ロンドンに比べさらに緯度が高いせいか、ウプサラの街では街路樹の一部ではもう葉の落ちた木々も見受けられ、「冬の雪が降る前」といったような感じです。
市庁舎までは車で10分もかからないくらいに近く、予定の10時をめがけてホテルを出たのですが、この日は公式訪問後の午後からオランダへ向かって出発することになっておりましたので、ホテルを出るまでの荷物整理に若干の時間を費やしてしまいました。
ウプサラ市庁舎では Stefan Hanna(ステファン ハンナ)副市長さんに出迎えて頂いたのですが、副市長さんは会議室に入ってこられるなり「こんにちは・こんにちは」と声を掛けられての名刺交換を始められたので、皆は一瞬キョトンとしてしまいましたが、実は1990年代にIT関係のビジネスマンとしてアジアを担当され、神戸で暮らしていたことがあるそうで、日本語を話されるのは10何年ぶりとの事でした。
Hanna(ハンナ)副市長さんのご挨拶では、
・ウプサラは東京と京都の混合したような都市である。
・ウプサラはスウェーデン ヴァイキングの本拠地であった。
・ウプサラには昭仁天皇が2回訪れている。
とお話をされ、
現在の人口は約20万人(最近の資料では18万8千人)で、その内の75%が中心市街地に住んでおり(逆にいえば、残りの25%の人たちは郊外に居るという事になる)、面積は首都ストックホルムの約10倍の広さでスウェーデンで4番目に大きな市である。
人口が年々増加している事などから2050年までには現在の75%増となる35万人の人口を予測しているとの事でした。
ウプサラには北欧最古の大学である「ウプサラ大学」があり、市の主力産業である製造業や製薬業などと研究分野において深いつながりがあるが、最近ではIT関係のコンサルタント業が一番成長しており、若い年齢層(学生)の人口の多い事がウプサラの特徴だそうです。
そして、ウプサラ市の政治的課題として2つの問題がある。と述べられ、
その一つは、市の発展に関する新しい産業(アイデア)を地域全体という形で展開していかねばならない事。
そしてもう一つは日本との共通の課題とも言えるが、「高齢化社会」をいかに経済的に支えられるかという事だそうです。
スウェーデンでは1998年から、高齢化社会への対応という事などとも関係して120万人の移民を受け入れてきましたが、日本では東京に居た時においても外国人が少なかったと感じておられ『我々はこの120万人の移民の皆さんと「どうやって融合するか?仕事の創出をどうするか?」といった問題と向き合い「移民の方との統合」を図っている。』・・・との事でした。
副市長さんの時間も限られており、若干の質問をお受けするという事だったので、さっそくと私の視察のメインテーマである「人口問題と少子化対策」について質問をしました。
もちろん前触れ(自己紹介)は英語で、質問自体は通訳の方を通して日本語で行いました。
質問:先ほどの説明において、2050年までに人口が75%増える予測とお聞きし驚いている。
日本では「人口減少社会と少子化対策」という事が問題となっているが、特に福祉政策という事についてはヨーロッパが先進地としての実績を多くもっておられると思っている。
その中でも「少子化対策」という事に関して、スウェーデンでは1995年に「男性の育休割当て」に関して法律で定め、西欧での家族政策のモデルとなっているとお聞きするが、そうした国での取組み方に関する意見やそれ以外に市(地方自治体)としての少子化対策などはあるのか?
回答:ウプサラ市自体の取り組みはない。
ウプサラでは毎年約3,000人の人口が増えているが、そのほとんどが生まれてくる子どもたちと言ってよい。
これは、ウプサラには学生が多く、他市に比べ若い年齢層の比率が高いからだと考えられる。
こうしたことから、児童保育の充実という事が大切だと考えている。
日本の安部首相も「女性にとって仕事と子育ての両立が大事だ」と言っておられるが、そのためには支援スクール(日本で言う保育園?)の充実を図ることが大切だ。
【他の質疑の一部】
質問:農業問題に関して、若者がなかなか育たないが?
回答:ウプサラでは、農業に関係している方(もしくは農業関係の経済指数か?)が1%くらいで、回答にはならないと思う。
質問:説明の中で、新しい産業を地域全体で・・・。とあったが、具体的にはどういった分野の産業を考えておられるのか?
回答:ウプサラには大学や企業が混在しているので、IT(ゲーム)関係や健康産業さらにはソーラーや波浪といったものでの環境(電力)産業などが考えられる。
質問:人口が増え続けているのは都市間競争があっての事か?
回答:表立っての都市間競争だとは思わないが、自然にそういう事になると思う。
ウプサラでは人口の集中化が進みつつあり、そこに比較的裕福なコミューンが出来ているが、経済的に恵まれない地域への支援という事が重要になってくる。
といったところで、Stefan Hanna(ステファン ハンナ)副市長さんの予定の時間が無くなり、皆で副市長さんを囲んでの記念撮影という事になりました。
記念撮影の後は休憩を挟んで研修会を再開するという事になったのですが、廊下ホールにはコーヒーと段積みになったお菓子が準備されておりまして、このお菓子はこちらの名物らしいのですが、砂糖がまぶしてあるようでして・・・?
私はコーヒーのみ大変おいしく頂きました。
休憩再開後は文書担当主任の Christian Dahimann(クリスチャン ダールマン)氏から説明を頂き、再度6名の方が質問をされました。
【私の感想】
先ず印象に残ったのは、ウプサラ市の歳出を一般市民の方が買い物をした時
のレシートのような表し方で表現してあった中身で、表現(私が訳した)順に述べると、
1、Skola och Forskola (学校と保育園) 45%
但しこれを、ハンナ副市長は「子どもたちの教育」と説明されました。
2、Fritid och Kultur (余暇と文化) 5%
3、infrastruktur Skydd(インフラの保護) 5%
4、Vard och Omsorg (健康と社会ケア)41%
但しこれを、ハンナ副市長は「高齢者介護」と説明されました。
5、Ovrigt (その他) 4%
totalt:cirka 11 miljarder kronor
合計:約110億クローネ(日本円で約1,628億円、1kr=14.8円で換算)
というもので、いかに教育と福祉関係に重点を置いているか(お金を掛けているか)がわかった。【多分この金額には日本で言う一般会計と特別会計の合算額だと思うが?】
また、ウプサラ市は産業構造や人口問題において大学(学生)とのかかわりが強く感じられ、学園都市というよりは産・学・官(人口ということからすれば+民)連携都市と言った方があっているように思えた。
ウプサラ市を含めヨーロッパでは人口問題を議論する上で、移民という事に対する感情(思い)が日本とは全く違っていると強く(先のロンドンでもそうだったが)感じた。
【農耕民族と狩猟民族の違いなのだろうか?四方が海で囲われ、江戸時代の鎖国政策の名残とも言うべきなのだろうか?】
我が国においてさらなる少子高齢化が進めば、高齢者社会や産業構造を支える労働力として「外国人労働者」の受け入れという事が当然のように進むのであろう。
歴史の違い(周りの国とにかかわり方が浅い?)などから、ヨーロッパ各国のように人(移民の方も含めて)の受け入れ(交流も含めて)がスムーズに進むのだろうか?・・・と、感じた次第です。